アンドロイドラヴァー

アンドロイドラヴァー -第二話目-

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現時刻は放課後。和夜は帰宅部なので,HRが終わったら速攻で帰れる。
何もしなくて楽な部活だと思っている和夜は、1年の頃から部活に入っていない。
和夜は ふと唐突な疑問が浮かび上がる。
帰宅部は一応 部活になるのだろうか?と。
語尾に“部”とついている所から、部活なのだろうと思い込んできたのだが・・?
そんな唐突な疑問を持ちながらも校門を抜けた。
和夜が校門を通り過ぎた後、雨が微妙に降ってきてしまった。
本降りになる前に家へ入りたい・・・・・・。
そう思って全速力で走った和夜だったが・・・時既に遅し。
制服はぐしょぐしょで髪も身体もズブ濡れ。
走る気は完全に失せきってしまった。それに今更走る必要はない。
一番濡れて欲しくなかった制服は・・・・もろ濡れである。
そんな訳で、歩いて帰っている真っ最中・・・。
やはり早朝に学校へ行くのがそんなに悪かったのだろうか?と、
雨の所為なのか,和夜は憂鬱になりつつあった。
こんなに雨雲まで怒り狂うことないだろう・・・。
朝は雲一つない晴天!という感じで真っ青な空だったというのに・・。
今じゃぁドス暗い灰色一色な空模様。
こんな時は気分も曇りますねぇ,と言う人も居るが、本当のことだったのか・・と改めて思う。
「はぁ・・・冷てぇ・・・・・」
思わず声に出してしまうほど寒くて冷たい気候。
そんな道端のド真中に倒れこんでいる女性が・・・
「?この人・・・・怪我して・・・・?・・・・・・・ッ!」
ザァザァ降りの雨中、怪我して倒れこんでいる女性を見つけた和夜。
不審過ぎる人物に近付くのは危ないとも思った和夜だったが、見てみぬふりが出来なかった。
応急処置くらいなら・・・と思って傷口を見た瞬間,呆気に取られてしまった。
視界に飛び込んできたのは、誰もが見ても驚くべき光景だった。
布か何かを包帯みたいに巻いておこうとした和夜だったが、
その女性の腕の傷口からは、機械みたいなものが見えていた・・・。
“機械みたいなもの”ではなく、どう見ても機械そのもの。
和夜は、何が何だかわからず,その傷口を凝視してしまった。
顔は普通に人であり、足も・・・体全体、普通の人間にしか見えない。
その傷口の部分だけ、肉が削れて中身,つまり機械が見えていた。
この雨で流れてしまったのかもしれないが、血というものが一滴たりとも落ちていなかった。
一体どうすれば良い?その辺の家の人たちでも呼んで、助っ人として助けてもらうか・・?
病院・・・いや、工場に行った方が良いのか・・・?
冷静な判断が全く出来ず、その場でパニクってしまった和夜。
本当なら、ここで人を呼んだ方が良いのかもしれないが、もしこの人が他人に 自分の事情というのものがバレたらヤバイと言ったら・・・?
・・・情けない話だが、到底責任を持つことは不可能だ。
「・・・よし。」
前後左右見回してみたが、今の所、人が通る気配は無いみたいだ。
とりあえず傷を隠して、この人も見えないところに運んで・・
そういうことを考えていた最中、何者かが和夜の背後に居たらしい。
思いっきり首の付け根を殴られてしまった。
和夜は、一瞬で意識が遠のいていくことさえ解らなかった。
・・・あの女性に会ってしまったということ。
それは、和夜の人生を左右することとなってしまったのだった・・・。

***


激しい頭痛が治まって、大分意識もハッキリしてきた和夜は、ゆっくりと周りの景色を見回した。
見たことがあるような景色ではあるが、一度も来たことが無い,
知らない場所に居るというのは、ものすごく恐怖感がある・・・。
気を失っていた所為もあって イキナリでもあるわけだ。
ボーっとしつつも、和夜は この部屋に慣れておこうと思って適当に目を泳がしていた。
ノックの一つも入れずに,急にドアが思いっきり開け放たれた。
大きい音にビクついてしまった和夜だったが、そのドアの方に人の気配を感じて目を向けた。
そこには,眼鏡をかけていて、短めなサラサラの赤髪に真っ白い白衣を身にまとった人がスッと立っていた。
多分、この病院の院長か何かだろう。
雰囲気的には とても怖い感じさえする。
「目が覚めたんだな?ボーっとしてるようだが・・・意識はハッキリしてるか?」
やはり雰囲気通り、無愛想でとても怖い。
白衣を着ていることもあって、まだマトモな人に見えるが・・実際はどうなのだろうか?
「?おい・・・?聞いてるのか?まさか、意識がハッキリしてないわけじゃないだろ?」
「・・・聞こえてるよ。解ったから、そんなに話してくるなよ・・・頭がガンガンする・・・。」
「なに酔っ払って二日酔いした奴みたいなこと言ってんだ。それだけふざけたことを言えるってことは、意識はハッキリしてるんだな?」
「なっ・・・!」
無愛想 且つ極悪非道。
その言葉が一番合っているだろうと思われる。
このような人物が院長で、この病院は成り立っているのだろうか?
そんな余計な考えが脳裏をぎる。
「・・・意識がハッキリしてれば何なんですか?俺、早く帰りたいんですけど・・・?」
「そうだな。まずは俺の話を聞いてもらいたいんだが?」
「そんなの知らねぇよ!見ず知らずの奴の話なんか聞くかっ・・・」
「だから、早く帰りたいんだったら大人しくしてろと言ってるんだ。そのくらい解ってもらいたいな・・・。」
和夜が立ち上がって出て行こうとしたら、思いっきり手首を掴んでベッドに押し倒してきた。
ギリッ・・と、手首を思いっきり握り締められた。
あまりの強い力で捩塞がれてしまい、起き上がる事が出来ない。
話を聞かない限り 帰らしてくれそうにないので、しょうがないなと思いつつ大人しくした。
話を聞けば帰してくれるようなので、和夜は話を聞く体勢をとった。
だが、初対面の人と話すことなんてあっただろうか?
見に覚えがない和夜は、目の前の人物に警戒の意を示した。
「お前、奈帆なほのこと・・・見たんだろ?」
「?なほ??誰だよ・・・?」
「さっきお前が近付いていった女の名だ。」
誰かに殴られてしまった所為で、頭がズキズキと響く。
そんな頭で、和夜が近付いていった女 という記憶を辿っていた。
フッと現れる記憶。おそらく その女というのは、背後から殴られたときの あの女の人のことだろう。
そこまで辿り着いた和夜は、気絶した自分をここまで運んでくれたのは、この白衣野郎なのかと気付く。
たまたまコイツが院長か何かだったということだろう・・。
そしてこの病院に連れてきた。
これなら全ての話に矛盾はない。
人は見た目だけでは分からないことが沢山ある。
それを今 改めて分かった気がした。
「あの人が何?どうかしたのか?」
「・・・見てないのか?アイツの傷口・・・・。」
傷口・・・・。あの女の人、傷口が普通ではなかった。
やはり何かあるのだろうか?
「傷口が・・・・機械・・・・・・みたいな感じ・・・だよな?」
「・・・やっぱり見てたんだな。あぁ・・・良かった。ココまで連れて来た甲斐があったというもんだ。」
「?連れて来た??」
どういうことだろうか?和夜は、連れて来た甲斐があった,という言葉に引っかかっていた。
「あぁそうだ。もしも知らないなんて言われたら罪悪感が残るしな。」
「罪悪・・・感・・・・・何で?」
「そりゃそうだろ?お前を後ろから殴って気絶させ、無理矢理ここに連れて来たみたいな感じだしな。むしろ拉致したと言っても過言ではない。」
「後ろから殴・・・っ!」
やはり人間は見た目から中身までも分かってしまうのだろうか?
先程考えていたことは全て、良いように作った空想にすぎなかったということだ。
「殴ったのは悪いと思ってる。・・・おいおい・・・そんなに怒るなよ。」
「怒ってねぇよ!とにかく聞いてやるから早く言え!」
なんて情けないんだろうか・・。
白衣野郎に殴られて、気絶してしまった自分が 何とも遣る瀬無い・・。
「随分と話が逸れたからな。」
「誰の所為で話が逸れたんだよ・・・。」
「何か言ったか?クソガキ。」
「なっ!?俺はクソガキなんかじゃ・・・」
「そういう小さなことに突っかかって来るから話が逸れるんだ。学習能力が発達してないからクソガキなんだよ。ただそれだけだ。」
確かに相手から見れば“クソガキ”というようにしか見えないだろう。
だが、そういう人をけなすことを言う方もガキなのではないか?
そう和夜は心の奥底で 自問自答をしていた。
どんどん話は逸れていく・・・誰も止めない限り、
終わることは無いだろうという程まで・・―――――。


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