アンドロイドラヴァー

アンドロイドラヴァー 第一章『初めての存在との交流』 -第一話目-

ススム | モクジ

こんなにも眩しい朝陽があっただろうか。
そして、こんなにも早い朝を迎える日が来ようとは・・・。
・・・こんなに早く登校するなんてのは何年ぶりだろうか?
まだ、誰も来ていないようだ。
いつもは遅刻ばかりで朝が弱い筈だ。
なぜか知らないが、今日は変な感じがして珍しく飛び起きた。
・・・教室一番乗りというのは・・何か馬鹿のようにも思える。
遅刻せずに来たのは久々・・・というより初めてだろう。
つまり、まだ時間が早過ぎて誰も登校していないということだ。
自分独りというのは寂しさや虚しさがある。
誰か一人くらい居ても良いんじゃないか?
と思えてくるほど孤独を感じる。
つまらないな・・・と思いながらも、教室内をウロウロしていた。
今現在の時刻は“7時?分”。
こんな時間に来ている奴なんて誰も・・・
そう思いながらボーッと時計を眺めていた。
そんなとき、わざと振り向かせるかのような物音がドア付近からした。
もちろん、その音に反応して振り返ってしまったが・・・・・
「・・?かっ和夜!?」
「・・・萱。お前・・・相変わらず失礼な奴だな・・。」
その物音とは、コイツ,相場 萱あいば けんがドサッと鞄を落とした音だった。
萱は同じクラスメートであり、親友であり、幼馴染だ。
前から仲が良いということは、一番 和夜自身が知っている。
だが、萱はいつもいつも失礼極まりないことをするのが得意らしい。
ただ和夜が初めて遅刻せずに登校したに過ぎないというのに、
未だにドアの前で鞄を落とした格好のまま硬直している。
失礼にも程がある。本当に幼馴染か?親友か?
「ちょっと・・・萱、どうしたの?ここに居たら通行の邪魔・・・・・・ッッッッ!」
萱の後ろから聞き慣れた声がした。
萱に隠れてしまって見難かったが、そいつも萱と同じ顔をしたまま固まっていた。
鞄を落としていなかったので、萱よりはマシかもしれないが。
「・・・なんで和夜が居るの?」
「いや、この学校の生徒なんだから居てもおかしくないだろ?」
なんで居るのかと聞いてきたのは貝塚 静香かいづか しずかという奴だ。
ボケてるように見えるが、時々スパッと残酷な,心に深傷を負うようなことを言ってくる。
全く悪気は無いようだが、和夜から見れば ある意味,残虐な感じさえする。
それに・・・気のせいだろうか?今、存在否定されたような気もするのだが・・?
和夜は、自分が居て悪いことなんてないだろう?
と思いつつ、今 貝塚の言った言葉に傷ついていた。
そんな和夜の気持ちなんか知らない,というような面持ち。
こんな風に酷いことを言わなければ、普通の女の子なんだけどな・・・と、いつの間にか自分が自分を慰めていた。
「あんまり珍しいことすると、空から槍が降ってくるとか何とか・・・?」
「和夜・・・お願いだから、無罪の私たちまで巻き込まないでね・・?」
喧嘩を売っているつもりなのだろうか?
槍が降ってくる、人を巻き込むな など、意味不明なことを言っていた。
「無罪の私たちってなんだよ?まるで俺が有罪って言われてるみたいじゃ・・・」
「え?そうでしょ?」
・・・人の気持ち、考えたことありますか?
貝塚と萱の言葉が、あまりにも酷過ぎて そう思ってしまう。
こんな人の気持ちを考えない奴らだが、中身は結構良い奴らなのだ。
そんな萱と貝塚と和夜の3人で、予鈴が校内に鳴り響くまで話し続けていた・・・。

***


現時刻は放課後。和夜は帰宅部なので,HRが終わったら速攻で帰れる。
何もしなくて楽な部活だと思っている和夜は、1年の頃から部活に入っていない。
和夜は ふと唐突な疑問が浮かび上がる。帰宅部は一応 部活になるのだろうか?と。
語尾に“部”とついている所から、部活なのだろうと思い込んできたのだが・・?
そんな唐突な疑問を持ちながらも校門を抜けた。
和夜が校門を通り過ぎた後、雨が微妙に降ってきてしまった。
本降りになる前に家へ入りたい・・・・・・。
そう思って全速力で走った和夜だったが・・・時既に遅し。
制服はぐしょぐしょで髪も身体もズブ濡れ。
走る気は完全に失せきってしまった。それに今更走る必要はない。
一番濡れて欲しくなかった制服は・・・・もろ濡れである。
そんな訳で、歩いて帰っている真っ最中・・・。
やはり早朝に学校へ行くのがそんなに悪かったのだろうか?
と、雨の所為なのか,和夜は憂鬱になりつつあった。
こんなに雨雲まで怒り狂うことないだろう・・・。
朝は雲一つない晴天!という感じで真っ青な空だったというのに・・。
今じゃぁドス暗い灰色一色な空模様。
こんな時は気分も曇りますねぇ,と言う人も居るが、本当のことだったのか・・と改めて思う。
「はぁ・・・冷てぇ・・・・・」
思わず声に出してしまうほど寒くて冷たい気候。
そんな道端のド真中に倒れこんでいる女性が・・・
「?この人・・・・怪我して・・・・?・・・・・・・ッ!」
ザァザァ降りの雨中、怪我して倒れこんでいる女性を見つけた和夜。
不審過ぎる人物に近付くのは危ないとも思った和夜だったが、見てみぬふりが出来なかった。
応急処置くらいなら・・・と思って傷口を見た瞬間,呆気に取られてしまった。
視界に飛び込んできたのは、誰もが見ても驚くべき光景だった。
布か何かを包帯みたいに巻いておこうとした和夜だったが、
その女性の腕の傷口からは、機械みたいなものが見えていた・・・。
“機械みたいなもの”ではなく、どう見ても機械そのもの。
和夜は、何が何だかわからず,その傷口を凝視してしまった。
顔は普通に人であり、足も・・・体全体、普通の人間にしか見えない。
その傷口の部分だけ、肉が削れて中身,つまり機械が見えていた。
この雨で流れてしまったのかもしれないが、血というものが一滴たりとも落ちていなかった。
一体どうすれば良い?その辺の家の人たちでも呼んで、助っ人として助けてもらうか・・?
病院・・・いや、工場に行った方が良いのか・・・?
冷静な判断が全く出来ず、その場でパニクってしまった和夜。
本当なら、ここで人を呼んだ方が良いのかもしれないが、もしこの人が他人に 自分の事情というのものがバレたらヤバイと言ったら・・・?
・・・情けない話だが、到底責任を持つことは不可能だ。
「・・・よし。」
前後左右見回してみたが、今の所、人が通る気配は無いみたいだ。
とりあえず傷を隠して、この人も見えないところに運んで・・
そういうことを考えていた最中、何者かが和夜の背後に居たらしい。
思いっきり首の付け根を殴られてしまった。
和夜は、一瞬で意識が遠のいていくことさえ解らなかった。
・・・あの女性に会ってしまったということ。
それは、和夜の人生を左右することとなってしまったのだった・・・・・・。

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