アンドロイドラヴァー

アンドロイドラヴァー -第四話目-

モドル | ススム | モクジ
いつも通りの朝陽が窓から差し込む。快く起きるには絶好の朝陽。
それを浴びることによって今日1日,頑張って行こうと思えてくる。
だが今日は、なぜか細い糸のような光しか入ってこなかった。
いつもは部屋全体を包むくらい差し込んでくる筈だが・・・?
寝起き最悪の状態でベッドから起き上がり、窓の外をボーっと眺めた。
「・・・・・・・・んぁ?」
情けない言葉しか出てこなかった和夜は、起きたばかりで細かった目がパチッと見開いた。
何度も瞬きしても目を擦ってみても、目の前にある物体は消えなかった。
「・・・マジですか・・?」
和夜はこの時だけ、現実拒否したかった。
むしろこれは現実なのかどうかすらわからない。
「家が・・・建ってる・・・な。」
朝陽の差込が悪いのは、この家が邪魔している所為だ。
今まで和夜の部屋に入っていた朝陽は、全てあの家に盗られてしまったということだ。
和夜にとっては、一日の元気の源とも言えた あの朝陽。
返してくれと言ったとしても、おそらく無理不可能なことだろう。
「・・・あの話は、嘘だよな?」
昨日の・・奈帆が 何だどうしたと、海麻が言っていた話。
あの話が現実になったのだろうか?そんな馬鹿な話が・・・
ピンポー・・ン・・・・・・
「?こんな時間に誰だよ?」
今この家には和夜一人。父母は海外出張中だ。
海外に出てから、もうどのくらい経つのだろうか?
ふと忘れてしまうくらい、もう大分前の話だ。
電話に接客、全て和夜がやらなくてはならない。
当然のことなのかもしれないが、人に任せることが一切できないというのは時に辛い。
誰かが居れば・・・と、いつも思っている。
和夜自身では違うと思っているが、実際は寂しいのかもしれない。
また今日もそんなことを思いながら、和夜は階段を下りて行き、玄関のドアを開け放った。
「あっ・・・こんばんはー・・・。」
「・・こんばんはってのは夜の挨拶だと思いますが・・・・どなた様ですか?」
「あっ・・ごめんなさい・・・・。」
今は、おはようございますと言うのが正しい挨拶だと思い、和夜は つい注意してしまった。
和夜の前で“ごめんなさい”と言いつつ頭を下げているのは、初対面の女性だった。
初対面の、しかも女性に注意するなど・・・いくら敬語とはいえ、失礼極まりないことである。
頭を下げていた女性は、ゆっくりと頭を上げて一礼。そして・・・
「私、隣の家に住み始めました,奈帆といいます。これからもよろしくお願い致します。」
礼儀正しく、且つ淡々と話す女性は奈帆というらしい。
茶色に染まっている髪は、大体肩ぐらいの長さでサラサラと風に揺れている。
どこかで見たような・・それに、どこかで聞いた名前・・・・・。
さっきまでは信じられなかったが、やはり昨日の話は本当だったのかと本人を見て初めて気付いた。
どこかで見たような・・・ではなく、実際に見た人物である。
ごちゃごちゃと考えていたため、奈帆が挨拶してからの間は沈黙の一点張りだった。
相手もどうしたら良いのか解らず、ただただ立ち尽くしている。
「おいおい?まさか奈帆のことを忘れたんじゃないだろうな?」
その沈黙の間を遮るかのように、ある男が和夜たちの会話に侵入してきた。
「って・・・海麻!なんでここに・・・?」
「居て何が悪い?ただ挨拶に来ただけだが?」
人を斬り捨てるような言い方をする この男は、奈帆がアンドロイドだと・・そういう話をした張本人,皐月さつき かいだ。
知らぬ間に平然と立っていた海麻は、不機嫌そうに和夜を見据えている。
「別に悪くないけどさ・・・。なんで居るのかなー・・・と。」
「一言だけ言っておこうかと思ってな。昨日の話、まさか忘れたとか言うなよ?」
「・・・やっぱり本当なんだな・・・・・・これが現実・・・。」
今更何を言ってるんだと、人を馬鹿にしたような口調で言い捨てる海麻。
確かに、本人が出てきた時点で気付くのが普通か・・・。
とはいえ、海麻はいつも人を馬鹿にしたような,嘲笑うような口調で話す。
挑発しているのか?と喧嘩を売りたくなってくる。
だが、そんな海麻にも良い所はある。それは昨日話していてわかったことだ。
「・・んで、これから学校があるんだろ?今日から奈帆と一緒に登校してやってくれないか?」
「はぁ?面倒も見てやるってことになったってのに・・学校まで面倒見ろってか?」
「奈帆の面倒を見ることになったのは、和夜がそんな金払えないと言ったからだろ?」
それは全くの事実だが、実際あんな大金払えるわけがない。それに和夜は まだ学生だ。
生活費は両親が仕送りしているため、何とかまかなっているが。
「でもさ・・・学校の面倒は無理・・」
「自業自得と思え。お前に選ぶ権利はない。」
「なっ・・・!」
今、心臓を一突きされたような気がした。淡々と繰り出す海麻の言葉全てにとげがあるような気がする。
海麻の後ろを通り過ぎていく主婦らは、和夜の姿を見ながらクスクスと笑っている。
恥ずかし過ぎる。これでは近所の人たちに変な目で見られることだろう。もう印象は最悪としか言えない。
・・・先程からジッと見つめられている気がした和夜は、その視線の方に目を逸らした。
「・・・言い争いは、よく無いと思いますけど・・・?」
海麻と言い争っていた所為で、奈帆のことをすっかり忘れていた。
いつも言い争う理由は単純明快。ただ和夜が海麻に負けたくないという負けず嫌いから起こる。
だからか、どうしても勝ちたいという方が強くなってしまい、結局言い争う破目になる。
「えーと・・・・。これからお前の面倒を見ることになっている高野だ。よろしくな?」
「うんっ!家事とかほとんど出来ないから・・・家事全般によろしくねっ!」
「・・・・・?」
気のせいだろうか?さっきより・・・雰囲気というか何と言うか・・違う気がするのだが・・?
「なぁ海麻?奈帆、さっきよりも慣れ慣れしくなったという気が・・・」
「ん?あーそりゃそうだろ?人間だって、少しずつ話していけば慣れてくもんだしな。それと同じ原理だ。」
「えっ・・・?だってアンドロイドって・・・・」
アンドロイドにも、そんな学習能力というものが備えられているのだろうか?
そんな疑問が頭上に浮かび上がる。
「何度も言うが“高性能型”のアンドロイドってことを忘れるなよ?高性能型は、人間とほぼ同じ感情を持ち合わせている。一般のアンドロイドとは、ここが別格ってことだ。」
「へぇー・・・・。高性能型って名前だけじゃないのか・・・。」
「・・・馬鹿にしてんのか?」
別に馬鹿にしたつもりはなかったが、海麻には馬鹿にしたように聞こえたらしい。
和夜は散々殴られたり,キツイ悪口を聞かされた。
そんな姿を見て、奈帆は大爆笑。
こういう感情の変化みたいなものも、自然と勉強して身についていくのだろう。
この日を境に、毎日が波乱万丈という悲劇的(?)生活が始まった。
改めて、高性能型というものの強大さを知った日でもあった。
これから先、一体 何がどうなってしまうのだろうか?
高校に行って,就職して,人生を楽しんで,そして老後生活まっしぐらー・・・・
という、平凡な未来を思い描いていた和夜だったが、奈帆や海麻との出会いによって、平凡な未来像が粉々に壊されてしまった。
アンドロイドというヤツに巻き込まれて・・・。
これでは平凡な未来は期待出来そうにないと確信し,決意した。
―――コレから先、何が起きようとも必死に生きて生きて楽しむしかない・・・と。

***


この前までは物静かな ある一軒家として建っていた。
近所付き合いも、それほど活発ではないというような・・・本当に静かな一軒家。
そんなある一軒家から、ガシャンッバリンッ・・・という音が響いていた。
一体何事だっ?と思ってしまうくらい、その音は連続に鳴り響いていた。
「・・・お前、なーんにも出来ないのか?」
「えーと・・・はい・・・・・なーんにも出来ませんでした・・・。」
「敬語を使っても許さねぇからなッ!」
和夜は、昨日からコイツの面倒をみている。
コイツというのは、高性能型アンドロイドの奈帆という奴のこと。
なんとも不可解なことに、半日で和夜の隣に家を建てて引っ越してきたという,非現実的なことが起こったのだ。
和夜の頭の中は、未だに混乱状態に陥っている,という感じである。
「だから言っただろう?家事全般に頼む・・・とな。」
このムカツク野郎は海麻という奴だ。
腹立つことしか言わないのか?というくらいムカツク奴だ。
和夜はこの2人のおかげで散々な人生を送ることになってしまった。
「高性能型じゃないのか?このアンドロイドは・・・。」
「ちゃんと名前で言ってよぉ!奈帆だよ?奈・帆!」
「うるせぇ!家事の一つも出来ない奴にグダグダ言われたくねぇよ!」
「うぅ・・・そんなキツイこと言わないで下さいな〜。」
和夜がさっきから怒鳴っているのは・・・奈帆が全く家事が出来ないということだ。
掃除・洗濯・料理も何もかも・・・・・・。
いくら家事が出来ないとは言っても,何か一つくらいは出来るだろう?・・・どうやらそう思っていた和夜が甘かったらしい・・。
何が出来て、何が出来ないのか知っておきたいから何かやってみてくれ。と言い出して、洗濯をやらしたら・・・。
洗濯機から泡がブックブクと溢れ出てきて、洗濯機から洋服を取り出してみたら・・・洋服全部がビリビリに破れているという大惨事。
今度は料理を!といったら・・・。
卵は落とす,皿は落とす,そして割れる。
やっと出来た料理は目玉焼き。しかも焦げ焦げの・・。目玉焼きなのかどうかすらわからないほど焦げていて、食べられたものじゃない。
そして今に至る。・・・この台所を片付けるのは、かなりの時間と忍耐力が必要だ・・・。
「和夜。女の子には優しく,丁重にしろよ?」
「そうだよぉ〜!女の子には優しくしろぉ〜!」
「偉そうなことを言ってる割には・・・さっきっから口しか動いてないんじゃないか?」
「ふんっ・・。俺が片付けを手伝ってやってるんだ。それだけでも感謝してほしいんだがな?」
今は、和夜と奈帆と・・・珍しいことに,海麻が奈帆のやってしまった料理の後片付けをしている真っ最中だ。
床に四つん這いになり、雑巾片手に床を拭き、もう片方の手でガラスやら皿の破片やらを拾っている。
「大体の破片だったら手でも取れるが・・・後は掃除機をかけるしかないな。」
「そうだな・・・。見えない欠片とか散らばってそうだし。じゃぁ・・・」
「じゃぁ奈帆。今度は掃除機をやったらどうだ?掃除はどのくらい出来るのか、和夜にみてもらうと良いだろう。なぁ,和夜?」
つまりそれは、また奈帆に家事をやらせるということになる。
「うん!じゃぁ持ってくるね♪」
「あぁ〜〜ッもう良い!奈帆が家事できないこと、よくわかった!もうやらなくて良い!あとは俺がやる!お前は見てるだけで良い!」
また何か壊されたら・・・高野家破産の危機とも言えるだろう。
命がいくつあっても足りない・・・ではなく、金がいくらあっても足りない状態に転落する。
父母両方、海外出張中のため生活費は仕送りとなっている。
そんな和夜に余裕の金は・・・ない。
「私、もうやらなくて良いんだ〜♪やった〜♪」
「そうそう・・・。お前は黙ってれば良いよ・・・。」
奈帆は全く家事が出来ない奴ということがよくわかった。
今後一切、頼むことはないだろう・・・。
・・・高性能型アンドロイドといっても、全ての技術が発達しているわけではないということもわかった。
一体,高性能型とは何なのだろうか?
「ということは,奈帆の面倒は見てくれる、ということで良いのか?」
「・・・でないとコイツ、生きていけないだろ・・・?この家だって、ゴミ屋敷になり兼ねない・・・。」
「ご近所中で知らない人は居ないという程の、人気者になれるチャンスでもあるな?」
「大ッ迷惑だ!それにゴミ屋敷が隣って史上最悪・・・。」
そのゴミ屋敷があまりにも酷かったら、ご近所どころじゃない・・・。TVで放映されて、日本中に広がる破目になる。
そんな所まで面倒見きれる筈もない。
「冗談だ。俺はゴミ屋敷で住む気はない。お前が奈帆の面倒を見ていてくれるなら大丈夫だろう。」
結局そういう話になるわけだ。もう反論するのも無駄のような気がしてくる。
「解ったから・・・早く片付けようぜ・・・。」
「あとはお前が掃除をかけるだけだが?」
「・・・そうみたいだな・・。」
先程から海麻のペースにつられているような気もする。
いや、絶対につられているだろう。これはマイペースというものではない・・・。
なぜ海麻のペースになるんだ、と落ち込みながら掃除機をかける和夜。
掃除機をかけているのを、海麻と奈帆がボーっと見ていた。
一欠片も逃さないように、台所の床を隅々と丁寧に掃除していった。

「なぁ?奈帆の名字って・・・何なんだ?」
掃除がやっと終わって、リビングのソファーにゆったりと腰掛けてお茶を飲んでいた和夜と奈帆と海麻の3人。
疲れ果てて何も話していなかったが、和夜は ふと疑問が浮かび上がったらしく、率直に聞いていた。
「??急にどーしたの?名字なんて聞いて・・・?」
「いや・・・明日から学校だし・・・・。奈帆のこと、名前で呼ぶのはちょっとな・・。」
「??」
まさか学校内で“奈帆”と呼ぶわけにはいかないだろう。
それに和夜は、女子のこと名前で呼んだことない。
そういうこともあり、正直呼び難い。
呼んだことのない和夜が急に“奈帆”と名前で呼んだら・・・絶対に何か勘違いされるだろう。
そんなことになったら、一体どう説明して良いのか解らない。
「俺、学校では奈帆のこと名字で呼ぼうと思ってるからさ。」
「その前に・・・名字って何なの?」
「・・っておい!知ったような感じで最初 話してたじゃねぇか!」
「だって〜〜!わからないものはわからないってば!そんな言葉知らないよ!」
名字を知らないというのはどういうことなのだろうか?
毎度思うが、これでホントに高性能型なのか?・・・言葉だけのような気がするのは気のせいだろうか?
「まぁ、奈帆が知らないのも無理はないだろうな。」
「??教えてないから・・・ってことか?」
「あぁ。なんたって奈帆は名字ないしな。教えるにも教えられないだろう?」
確かにそれは納得できるが、誰が考えても 名字がない奴が居れば不審に思うだろう。
「名字なしで、よく学校に入れたもんだな・・?」
「ん?あ・・・あぁ。特に問題は無かったが?」
有り得ない。名前だけで許されるなんてのは・・・普通じゃ有り得ないことだ。
「適当に書いて誤魔化した・・・とか?」
「いや、そんなことはない。後々考えれば良いことだと思っていたからな・・・。それに名字が無くても違和感は何も無いだろう?別に相手に名字を言うわけでもないからな。」
「・・転校生って、一番最初に自己紹介すんの・・・知らないのか?」
「・・・・・・・・・・・・奈帆、どんな名字が良い?」
全く素直ではない。海麻は、知らなかったと一言も言う気がないようだ。
後々考えるつもりだったのではなく、最初から必要ないと思ってたのだろう。
「私は・・・カワイイ名字が良いなぁ♪」
「可愛い名字か?名字なんて、どれも可愛気ないものだろう?」
「えぇ〜?そうなの?」
「普通は名字なんて選べるもんじゃねぇからな?わかってるか?・・・何も思いつかないなら、最初についてた名前を名字にすれば良いんじゃないか?」
そうだ。アンドロイドだろうと、一番最初の名前というのがある筈だ。
それを名字として使えば・・・何も新しく考える必要はない。
「最初の名前か?・・別に構わないが、確実に怪しまれる名前だと思うが・・・?」
「?何で怪しまれるんだ?」
「奈帆の最初の名前は“コードナンバー004”だ。これで怪しまない奴など居ないと思うが・・・違うか?」
「・・・・・・・・・奈帆、名字・・・何か思いつかないのか?」
アンドロイド・・・確かに あんな名前が付いていてもおかしくない。
それに早く気付けば良かったと、和夜は聞いて後悔した。
「じゃぁ・・・キャンディーっていう名字は?キャンディー奈帆!これ可愛いよ♪」
「なんだよ,その芸名みたいな名字は?俺は芸名を考えろって言ってるんじゃない。名字だ!」
「くっくっ・・・良いツッコミだ・・・和夜。」
「んなこと言われても嬉しくないからな?」
海麻は大爆笑。奈帆は芸名と言われたことにショックを受けている。
なぜこんなにも名字で苦戦しているのだろうか・・・。
和夜はコップをガチャンッと机に叩きつけるように置いて、スッと立ち上がった。
「ちゃんとした名字を考えること!一人4つは考えろ!良いか?」
また俺はソファーにドサッと座り、海麻と奈帆を交互に,睨みつけるように見据えた。
「そんな睨み付けなくても良いだろう?一人4つ?そんなもの簡単だ。」
「そうだよ〜・・・。急に大きな音なんか立てて、驚いちゃったよ?」
「奈帆、今決めてんのは自分の名字なんだからな?自覚してんのか?」
「わかってるよ〜?ちゃんと理解してる。バッチグー。」
ホントに理解してるかどうか不安だったが、和夜もいくつか名字を考えてやった。
意外に名字を考えるのは難しい・・・。一般的な名字しか思いつかない・・・。
「よし。4つなら考えたぞ?これで良いんだろう?」
「もう考えたのか?早いな・・・。んで、何?」
「田中・鈴木・山田・佐藤。」
「・・・・次、奈帆はどうだ?」
「無視するとは良い度胸だな・・?」
一般的過ぎて、無視したくなるような名字ばかりが挙げられたが、今さっき和夜も考えていた名字だ。
そんな一般的な名字・・・ネーミングセンスゼロと言える。
「えー?もう殆ど海麻が答えたちゃったから無いよ?」
「・・・あぁそうですか。左様で御座いますか。」
何で全員 こんなにネーミングセンスが無いのだろうか・・・。
奈帆に期待していたのが間違いだったのだろうか。この2人がダメだったということは、和夜の考えた名字になるということだ。
「ふんっ・・・。そんな人をバカにしたような感じだが、和夜はどうなんだ?」
「俺?俺の考えたのは・・・神崎かんざき菅野かんの五十嵐いがらし篠宮しのみや。」
「・・・よくそんな名字が浮かんできたな・・。」
正直驚いたよ、という感じの海麻。目をパッチリと見開いて丸くしてる。
どうやら こんな名字を考え付くと思わなかったらしく、予想以上に驚いているといった感じだ。
この時は妙に素直な反応をしてきたので、和夜も少し驚いてしまった。
「あっ!最後のヤツ、気に入ったかも!」
「最後のって・・・篠宮か?」
そうそう!と首を縦に振って頷く奈帆。よっぽど気に入ったらしい。
これで学校に行っても、何の違和感もなく,怪しまれることも無く過ごせるわけだ。
「今日から奈帆の名字は篠宮か・・。篠宮しのみや 。まぁ悪くはないな。」
「むしろ全然良いって。田中 奈帆とかよりマシだろ?響きとかさ。」
「・・・それは自分にネーミングセンスがあると言いたいのか?そして俺にはセンスが無い、と・・・?」
「誰もそんなこと言ってないだろ。ネーミングセンスなんて関係ないって。」
海麻・・・妙に勘が良い時があって困る。
心の中の声が聞こえているのではないかと思う時さえあるくらいだ。
和夜にネーミングセンスが有るかどうか知らないが、とにかく奈帆の名字は篠宮となった。
明日から学校が始まる。
そして・・・奈帆の身の回りの世話という仕事も今まで以上に増えることになる。
明日からがある意味のスタートなんだと思いつつ、飲み終わったコップを3つ、台所へ運びに行った・・・。

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